岩手・木質バイオマス研究会は、木質バイオマス利用の普及を通じて、岩手の風土、地域性に根差した循環型社会の形成に資することを目的に活動しています。

設立:2000年7月5日

 【事務所】

住所:〒020-0861 盛岡市仙北1-14-20

Tel&Fax:019-664-0937

E-Mail:wbi★xg.main.jp(★を@に換えてください。)

※事務所は不在がちですので、ご用件はなるべくメールでお願いいたします。

 

◆県内の木質バイオマス施設の受賞が続いています!

・久慈バイオマスエネルギー㈱

・㈱花巻バイオエナジー

◆代表年頭所感

 

新年あけましておめでとうございます。旧年中は、当研究会の活動にご支援ご助力を賜りましたこと厚くお礼申し上げます。

当研究会は、2000年に発足し、今年で20年目を迎えることになります。その節目を前に、すこし過去を振り返ってみたいと思います。

設立当初、スウェーデンをモデルとした木質バイオマス社会の実現に向けた政策提言を行い、当研究会の活動は全国的にも注目されるものとなりました。産官学そして市民との力強い連携により、木質バイオマスの市場が生まれ、岩手県は名実ともに木質バイオマス利用の先進県となりました。特にも、木質バイオマス燃焼機器メーカーや林業関係者の貢献は大きく、岩手県の大きな財産となっています。

2011年の東日本大震災の経験は、新しい地域社会の創造に向けて木質バイオマスエネルギーが果たす役割の大きさをより深く理解する契機となりました。木質バイオマスエネルギーの導入は、人と自然、人と人との関係を新たに結び直すものであり、持続可能な社会・経済の実現を大きく前進させるものとして期待されるものです。そうした思いから、2回目の政策提言を行いました。さらに、一昨年、熱利用の普及をさらに推し進めたいとの思いから、特にその主軸たるチップボイラーの普及に関わる3回目の提言を行いました。なお、震災発生後継続してきた復興支援活動については、仮設住宅団地の集約が進んだことにより、昨年度をもって終了いたしました。これまでご協力くださいました皆様に感謝申し上げます。

私は、一昨年より、当研究会の代表を務めております。私の専門分野は、建築・住宅です。当研究会の運営委員の顔ぶれの中では、最も「川下」――つまり、ユーザーに最も近い立場ということになります。各種施設でのチップボイラーの普及は、この数年でかなり進みました。その一方で、個人ユーザーのレベルにおいては、地域の資源である木質バイオマスのエネルギー利用は、なかなか進んでいないのが現状だと考えます。それを踏まえ、昨年の年頭所感では「改めて、自分たちの暮らしを見直してみる…そんな活動にも関わっていけたらよいのではないか」と申し上げました。しかしながら、私の力不足もあり、なかなかそのような活動ができないまま、1年が経過してしまいました。申し訳なく思っています。

当研究会の取り組みは非常に小さなものですが、10年後、20年後の地域社会に貢献するよう本年も活動していきたいと思っております。引き続きご支援ご助力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 

(内田信平)

この記事は林業新報に掲載されたものです。転載をご許可くださった林業新報社に御礼申し上げます。

◆ 燃料用木質チップの生産・流通に関する提言

1. 目的

 この提言は、熱利用を中心とした木質バイオマスエネルギーの主軸となるチップボイラーをさらに普及させるために、水分率等の品質に応じた燃料チップの生産及びその円滑な流通を促すことを目的としています。

 

2. 背景及び課題※

①岩手県はいち早くチップボイラーの導入が進みましたが、東日本大震災後導入が加速し、現在49台に至っています。

②その結果、熱利用に供される燃料チップは2010年の1,592BDtから2015年の8,526BDtへと5.4倍へと急増しました。

③チップボイラーの民間施設への導入が増加したり、チップ供給事業者も森林組合以外が増加するなど、その担い手が多様化しました。

④その結果、ボイラーと燃料チップのミスマッチが起き、導入施設でトラブルが起きたり、チップ供給者の負担が増したりするなどの事例が確認されました。

⑤燃料としてのチップは、水分率が低いこと、すなわち発熱量が大きいほど高い価格で取引されるべきですが、ほとんどの事例で発熱量の大小を評価し価格に反映させることなく、任意の価格で取引されていました。また、価格の基準となる根拠を理解している事業者はほとんどいませんでした。

※遠藤元治氏(本会会員)の研究成果より。

 

3. 提言

【提言1】

燃料チップの品質(=水分率=発熱量)を価格に反映させた取り引きを促すよう、需給双方への情報提供と合意形成を支援する。

 水分率の低い(M45以下の)燃料チップを供給するためには、何らかの乾燥工程が必要となりコストが掛かり増しになることから、発熱量をベースとした、需給双方が納得できる取り引きに転換していくことが求められます。また同時に、水分率を管理できる燃料チップの供給業者を育成していくことが求められます。

 

【提言2】

発熱量をベースとした取り引きのためには、精度の高い簡易な水分計が不可欠であるため、そのような水分計の導入を促進する。

 これまでも、簡易な方法で水分率を推計してきましたが、樹種が異なったり混じったりすると対応しにくいという問題がありました。水分率を把握することで、価格形成だけでなく、需給双方で水分率の季節変動へ対応できるようになるなど、様々な利点が生まれます。また、地域でどのような品質の燃料チップが供給可能か把握することは、チップボイラーを導入する際の重要な前提条件となるため、チップの水分率の把握は最も重要な事項です。

 

【提言3】

 チップボイラーを導入する際は、その構想・設計段階から、燃料チップ供給を担う候補者と十分な意見交換をおこなう機会を持つよう促す。

 地域で燃料チップを供給できる者は実際には多くなく、どのような品質のチップをどれぐらい供給できるかは、チップボイラーを導入する前にある程度把握することが可能です。しかしながら、チップボイラーの導入が決まったあとで供給業者の選定が行われることが多く、望まれる品質の燃料チップが確保できない、あるいは供給業者に負担を強いるということが起きています。この点からも、【提言1】及び【提言2】に基づき、事前の調整が重要となります。

 

【提言4】

 チップボイラーの運用、燃料供給に関わる事業者の横断的な情報交換の場を設ける。

 燃料チップは地産地消的に地域内で供給されることがほとんどで、一対一の関係で取り引きされることがほとんどです。そのため、岩手県でこれほどの導入事例があっても、どのような問題が起きているのか、どのような工夫がこらされているかなど、情報を共有する機会がありません。これまでの経験が生かされるよう、事業者の横断的な情報交換を行ったり、勉強会を行う場が必要です。

2017年9月

 

この提言について会員からは次のような意見が寄せられています。

○気仙沼の「気仙沼地域エネルギー」が行っているバイオマス発電でも チップの水分含有率の想定違いによる問題が過去に生じた。

プラントはドイツ製で、あちらではチップ材はカラマツ系で、こちらのスギ系で運転したところ自然乾燥が困難となる冬場に燃料不足となった。乾燥設備の追加を行い現状は良好となっている。

やはり、今後検討される方には最初から必要な情報だと思う。

 

○かつてスギの材を乾燥するのに苦労した経験がある。今年はチップを乾燥して社会に提供する元年になる。このことを岩手から日本中に発信することが大切だと感じた。乾燥したチップを作るためのインセンティブとして何ができるかの戦略を考えることが必要だ。

 

○天然乾燥のためにヤードごとにそれぞれノウハウを持っている。それらの蓄積は岩手の財産だと思う。燃料用チップは相対取引であるが、お互いにバイオマスエネルギーの可能性に関心を持ちサスティナブルな価値を見出している所が、石油のような価格だけで取引しているのと違う良さだと思う。

 

○乾燥チップについてデータがあれば付加価値が付く。あまり細か過ぎてはいけない。石油との比較で相手に納得感があれば評価される。

 

○乾燥チップが供給できるようになると、小型で安いボイラーが導入しやすくなり、普及の幅が広がる。

 

○水分管理をきちんとしたチップが供給できれば納入先が多角化し供給を増やすことができる。製紙用チップが今後伸びることは考えにくく、チップ業者が年間を通じたなりわいをつくっていく必要がある。

◆2011年に行った政策提言

◆◆◆基本方針◆◆◆
  ・再生可能エネルギーに対する自治体の明確な姿勢が必要。
  ・地域が自立化していくことを重視し、地域住民の主体的な選択と地域資本の育成を促すことが重要。
  ・小規模分散型の熱利用をまず重視する。その経験の積み重ねの先に大規模な発電がある。
  ・地域ごとの特徴に配慮した、技術水準と資本規模を慎重に見極める必要がある。

  地域住民が管理・運用できる、安定したローテクが重要。
  ・木質バイオマスの根幹である、林業が活性化し安定していくことが重要。

  他との競争ではなく、新たな価値を創造し自ら価値実現できる範囲を少しずつ広げていくこと。


◆◆◆主な提言◆◆◆
 ・ 実践過程において、企業同士や消費者、地域住民の情報交換の場をつくる。
  ・補助金に依存しない、緩やかな規制や優遇措置等の施策を導入。
 ・ 木質バイオマス利用が森林経営の持続性に寄与するための制度を確立する。
 ・ 復興に際しては、再生可能エネルギーへのモデル地域をつくる。
  ・木質バイオマス利用は半径30キロ程度を目安とした範囲内で生産と利用の仕組みを構築する。
  ・エネルギー効率の高い住宅建築の推進と小規模分散型の熱供給システムの推進。
  ・地域資本を育成する観点から、民間ファンド、地元金融機関の協力関係を促したり、自然エネルギーへの投資を円滑にするための枠組みの構築が必要。
  ・木質バイオマスを中心とした熱利用、熱政策を重点的に進める。発電は当面、風力や太陽光で。
  ・ペレットの県内自給率を上げるための対策が必要。

詳しい内容は「資料」の中の「政策提言」のページからダウンロードしてご覧ください。

 

なお、自然エネルギー財団は2016年11月25日に下記の提言を発表しています。

「 木質系バイオマス発電に関するFIT制度見直しの提言  

  ~持続可能なバイオエネルギー利用実現のために必要な軌道修正を~」

こちらもご参照ください。(↑クリックするとリンクしたページが開きます。)